執筆:Rose Tan
編集・加筆: Rei Matsuda
調査:Jocelyn Lim
東南アジア転職を考えるとき、タイで積み上げた経験を次にどこで生かすかは大きな分岐点です。シンガポールの[貿易産業省(MTI、現・エネルギー・貿易産業省)は2026年8月、同年のGDP成長率の公式予測を「4.5〜5.5%」へ引き上げました]。
一方で、「タイでの経験はシンガポールで評価されるのか」「シンガポールで働く日本人の給料は、生活費の上昇に見合うのか」「年齢的に間に合うのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。Good Job Creationsでも、実際にタイで働いていた方で、シンガポールに転職したいという相談を受けることが増えております。
本記事では、東南アジア転職の中でも、日本に帰国せずに別の国へ移る「他国スライド転職」について、2026年10月時点の公的機関などのデータをもとに、給与・キャリア・市場需要・生活コストの4つの視点でタイとシンガポールを比較し、見落としがちな就労ビザの給与基準と年齢の関係もご紹介します。z
視点1:給与は同じ職位でも3倍以上の差
[日本貿易振興機構(ジェトロ)の「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」]によると、日系企業の非製造業マネージャー(課長クラス)の月額基本給の平均は、タイでは2,480 SGDに対し、シンガポールでは7,860 SGDでした(2025年8月時点)。非製造業の一般職スタッフでも1,200 SGDに対して4,270 SGDと、どちらの職位でも3倍以上の開きがあります。個人の給与そのものではありませんが、賃金水準の差の目安になります。
[アジア開発銀行(ADB)などの共同調査によると、シンガポールで高度なデジタルスキルを持つ人は、同じ職種でデジタルスキルの低い人と比べて最大30.1%の賃金プレミアム(給与の上乗せ)を得ています]。給与を比べるときは、国の平均だけでなく、ご自身のスキルの市場価値も押さえておきましょう。
視点2:投資と成長分野が広げるキャリアの選択肢
[シンガポール経済開発庁(EDB)によると、2025年に獲得した投資案件は固定資産投資額で142億SGDにのぼり、今後5年間で15,700人分の雇用を生むと見込まれています。その大半はPMET (専門職・管理職・経営層・技術職)で、全体の約3分の2は月給5,000 SGD超とされています]。
[情報通信メディア開発庁(IMDA)の「Singapore Digital Economy Report 2026」によると、シンガポールのデジタル経済の付加価値額は2025年に1,441億SGDへ拡大し、GDPの19.3%を占めるまでになりました]。人材開発省(MOM)の[人材不足職種リスト(Shortage Occupation List:SOL)]にも、金融サービスや情報通信、ヘルスケア、半導体など7分野の職種が掲載されています。
当社のリクルーターが日々の求人開拓を通じて実感しているところでは、タイでのマネジメント経験や多国籍チームを率いた経験は、異なる文化や価値観を持つ人材と協働し、組織をまとめる力として、シンガポールの採用市場でも評価される傾向があります。特に、チームの成果向上や業務改善、複数国の関係者との連携など、具体的な実績を示せることが強みとなります。タイでの現地採用からステップアップ転職を目指すなら、成長分野の職種とご自身の経験の接点を探し、英文CVではタイでの成果を数字で示すことが期待されます。
視点3:雇用は拡大を続ける一方、採用は「選別型」へ
MOMの[労働市場報告(2026年第2四半期)] によると、2026年第2四半期の総就業者数は前四半期から11,400人増え、6月時点の失業率は1.9%と低い水準を保っています。同報告では、求人数が3月の73,300件から6月には68,600件に減り、減少の中心は金融サービスと情報通信のPMET職でした(失業者1人あたりの求人数は1.48件)。一方、[民間の雇用予測調査(2026年第4四半期)] では、シンガポール企業651社の47%が人員数維持、32%が人員増加を予定しており、採用はより選別的になっていると分析されています。
[2026年の人材不足調査]でも、採用が最も難しいスキルとしてAIモデル・アプリケーション開発(26%)とAIリテラシー(AIツールを使いこなす力、25%)が上位に入りました。東南アジア転職の行き先としてシンガポールを見るなら、求人が多い=誰でも採用される、ではない点に注意が必要です。
視点4:生活コストは高くても、購買力も高い市場
[利用者投稿型のNumbeoでは、家賃を含む生活費はシンガポールがバンコクより163.3%高く、家賃だけを比べると294.7%高くなっています]。一方で、手取りで買えるモノやサービスの量を示す「現地購買力」は、シンガポールのほうが172.0%高いとされています(いずれも2026年10月時点)。
税金については、[シンガポール内国歳入庁(IRAS)]によると、税務上の居住者の個人所得税は累進課税で、最高税率は24%です。[暦年で183日以上シンガポールに滞在・勤務すると、原則として税務上の居住者となります]。転職初年度の手取りを見積もる際は、入国の時期も押さえておきましょう。
注意:東南アジア転職の「何歳まで」は就労ビザの給与基準に表れます
シンガポールの就労ビザのは、年齢に応じた給与基準を満たせるかが問われます。Employment Pass(EP)には、 [MOMが定める2段階の基準]があります。第1段階は年齢に応じた最低給与を満たすこと、第2段階は給与や学歴などを点数化するCOMPASS(補完性評価フレームワーク)で40点以上を得ることです。最低給与は年齢とともに上がります(月額、金融サービス業を除く)。
– 23歳以下:5,600 SGD(2027年1月以降の新規申請と、2028年1月以降に満了する更新は6,000 SGD)
– 30歳:7,223 SGD(同7,750 SGD)
– 35歳:8,382 SGD(同9,000 SGD)
– 40歳:9,541 SGD(同10,250 SGD)
– 45歳以上:10,700 SGD(同11,500 SGD)
前述のSOLの職種では、[この加点がなければ合格できなかった場合、EPはその職種での雇用に限られます]。2027年1月の引き上げも踏まえ、移るタイミングを計画しましょう。
よくある質問
シンガポールの家賃は、バンコクと比べてどのくらい違いますか?
[Numbeoの比較データ](2026年10月時点)では、1ベッドルームの月額家賃は、市中心部でバンコクの約864 SGDに対してシンガポールは約3,804 SGD、中心部以外でも約443 SGDに対して約2,731 SGDです。住居費の差が特に大きいため、オファーを比べるときは住宅手当の有無も含め、手取りベースで考えましょう。
シンガポールで働くと、所得税はどのくらいかかりますか?
EPの審査には、どのくらい時間がかかりますか?
東南アジア転職の次の一歩は、Good Job Creationsと
タイでの経験は、東南アジア転職の「終着点」ではなく、より大きな市場へ進むための「踏み台」になり得ます。シンガポールは生活コストが上がる一方、スキルが給与に反映されやすい市場です。ただし、EPの基準や選別的な採用を踏まえると、求人選びと経験の伝え方が結果を左右します。 Good Job Creationsは2006年の創業以来、日本語で相談できるシンガポールの転職エージェントとして、現地で働く日本人の皆さまと共に歩んでまいりました。単なる人材紹介会社ではなく、他国スライド転職に挑む方のキャリアを検討段階から支えるパートナーです。
※本記事は2026年10月時点の情報に基づいています。EPの要件や税率、生活費のデータは変更される場合があります。転職や申請の判断前に、EPと税制については必ずMOMおよびIRASの公式サイトで最新情報をご確認ください。