シンガポールの就労ビザ|条件と種類一覧、申請の流れ【2024最新】
シンガポールでの就職を希望する場合、就労ビザの取得は避けられません。シンガポールは治安の良さや給与水準の高さなどから、多くの日本人が移住している国のひとつです。シンガポールへの移住を検討するなら、まずはビザの種類や申請条件を把握しましょう。
この記事では、シンガポールで働くためのビザの種類や申請方法、取得のためのポイントなどを解説します。シンガポールへの転職・就職活動には、現地の人材紹介会社Good Job Creationsをぜひご活用ください。求人を募集している企業の紹介や無料相談も実施しています!
シンガポールのビザの種類
シンガポールには就労に関するビザだけでも複数あり、それぞれ対象や条件が異なります。代表的なビザの概要を見てみましょう(2024年8月執筆時点)。
EP(Employment Pass)
EP(Employment Pass)高度な専門職やエグゼクティブ、シニアマネージャーなど管理職に向けたビザです。雇用パス(EP)の申請者は、EPの資格要件を満たす給与に加えて、ポイント制のCOMPASSに合格する必要があります。駐在員や現地採用であればEPビザを目指す場合が多いでしょう。
対象:管理職、専門職、高度技能職、経営層
最低給与要件:5,000Sドル、金融業界では5,500Sドル(ただし、年齢に応じて金額が変動する)
有効期間:最長2年、更新時は最長3年
参考:MOM「Eligibility for Employment Pass」
EPの申請条件① 一定以上の月額給与
EPを申請するためには、最低給与基準を満たす必要があります。金融業界以外では月額5,000Sドル、金融業界の場合は月額5,500Sドル必要です。年齢や経験によっても基準が異なり、金融業界以外では1歳上がるごとに250Sドルずつ条件の月収も上がります。
例えば最低年齢の23歳以下では5,000Sドル、24歳では5,250Sドル、25歳では5,500Sドルと上がり、45歳以上では10,500Sドルが必要です。また金融業界では1歳ごとに273Sドル上がり、45歳以上では11,500Sドルとなります。
詳細はMOM(シンガポール人材開発庁)の最新ガイドラインを確認してください。
EPの申請条件② COMPASSで40ポイント以上取得
2023年9月から導入されたCOMPASSポイントシステムでは、申請者が40ポイント以上取得することが求められます。COMPASSは、個人の能力と企業の基準に基づいて評価されます。ただし申請者が自身でポイントを試算できるのは、個人に関する項目だけである点に注意してください。
基礎基準
COMPASSでは基礎基準・ボーナス基準ともに、個人と企業それぞれに関する項目で評価が行われます。基礎基準の個人に関する項目は「給与額」と「資格(学歴)」です。
給与額ではセクター(業界)に分けて年齢別に金額が設定されており、その金額を上回る月額基本給与があると10ポイント、金額によっては20ポイントを獲得できます。給与基準はMOMの以下のページで確認しましょう。
参考:MOM「COMPASS C1. Salary benchmarks」
また、資格(学歴)に関しては政府の定めた機関で学士以上の学位を持っていれば20ポイント、大学や大学同等の学位を持っている人は10ポイントです。日本の大学で20ポイントが加算されるのは、京都大学・大阪大学・東京大学・東北大学・東京工業大学の5つです。ただし大学の選定も適宜見直されるため、申請時には公式の情報で改めて確認しましょう。
参考:MOM「Eligibility for Employment Pass」
企業に関する項目では「多様性」と「ローカル社員比率」が評価されます。企業が多様な国籍の人材を雇用している場合や、同業界内で比較してシンガポール人を多く雇用している場合にポイントが加算される仕組みです。
ボーナス基準
COMPASSには基礎基準に加え、特定の条件を満たした場合に追加でポイントが得られる「ボーナス基準」も存在します。個人・企業に関して各1つずつ項目が設定されています。
個人に関するボーナス基準の項目は「スキルボーナス」です。専門性が高くシンガポールで不足しているポジションに就く場合は20ポイント加算されます。ただし申請条件はポジションごとに細かく定められているため、満たしているかどうか十分に見定める必要があります。
参考:MOM「COMPASS C5. Skills bonus – Shortage Occupation List (SOL)」
企業に関する項目は「経済戦略優先ボーナス」です。シンガポール政府が運営する対象のプログラムに参加し、経済戦略に貢献する企業に対して加算されるポイントです。ボーナスポイントの有効期間は最長3年間、もしくはプログラム参加期間のどちらか短い方で、条件を満たせば更新できます。
参考:MOM「COMPASS C6. Strategic Economic Priorities (SEP) bonus – eligible programmes」
Sパス(S Pass)
Sパスは若い駐在員や現地採用の外国人に多く発給されており、給与基準がEPの要件に満たない場合に候補となるビザです。
ただし、EPと異なり企業ごとに割り当てられたSパス枠には制限があり、企業によっては枠自体がない場合もあります。
対象:EPパスの給与要件に満たない外国人
最低給与要件:3,150Sドル
有効期間:最長2年、更新時は最長3年
参考:MOM「S Pass」
ワークパーミット(Work Permit)
Work Permit(WP)は最も一般的な就労ビザです。WPは建設や製造、海洋造船、加工、サービス部門に従事する、承認された供給国・地域からの労働者が対象です。給与や学歴の要件がないため、Sパスの申請基準を満たさない場合にも申請できます。
対象:以下の5種類に分けられる。
- Work Permit for Migrant Worker(ホールスタッフ・単純作業労働者・工事現場作業員など)
- Work Permit for Migrant Domestic Worker(家事補助)
- Work Permit for Confinement Nanny(産後の補助)
- Work Permit for Performing Artiste(クラブ等でのパフォーマンスアーティスト)
- Training Work Permit
有効期間:最長2年
MOM「Key facts on Work Permit for migrant worker」
アントレプレナーパス(Entre Pass)
Entre Passは、シンガポールでベンチャー支援を受けた起業家や、顕著な実績がある投資家向けのビザです。シンガポール経済への貢献が認められることが重要です。
対象:起業家、イノベーター、投資家
それぞれの条件は以下の通り。
- Entrepreneur(起業家):政府系VCやエンジェル投資家などから投資を受けている、シンガポール政府がサポートするインキュベーターなどの支援を受けている、顕著な起業の経験がある
- Innovator(イノベーター):シンガポール国外に知的財産権を有し、それに関連する事業を持つ、シンガポール高等教育機関などとの共同研究を行っている、顕著な実績がある
- Investor(投資家):投資経験および顕著な実績がある
有効期間:初回および1回目の更新:1年、更新時は2年
パーソナライズドエンプロイメントパス(PEP:Personalised Employment Pass)
PEPは、高所得のEP保有者や高額収入を得ている専門職の外国人に向けたビザです。PEPは転職時に再申請する必要がなく、また無職の状態となっても最大6カ月滞在できます。
対象:高額収入者
最低月収要件:2万2,500Sドル
有効期間:最長3年、更新不可
MOM「Key facts on Personalised Employment Pass」
Tech.Pass
Tech.Passは2021年1月に導入された、テクノロジー分野での豊富な経験と実績を持つ外国人専門家向けのビザです。テクノロジー大手もしくは成長企業の創業者や専門の技術者などが対象です。
対象:テクノロジー分野の技術者、創業者など
有効期間:最長2年、更新可能
条件:以下3つの条件のうち、2つを満たしていること。
- 直近(1年以内)の月額固定給が2万2,500Sドル以上
- 評価資本価格または時価総額が5億米ドル以上、または3,000万米ドル以上の資金調達をしているテクノロジー企業で、累計5年以上の主導的役割を経験
- 月間のアクティブユーザーが10万人以上、または年間1億米ドル以上の売上があるテクノロジー製品の開発において、累計5年以上の主導的役割を経験
Singapore EDB「Tech.Pass」
Overseas Networks & Expertise Pass(ONE Pass)
2023年1月に新設されたONE Passは、ビジネス・芸術・スポーツ・研究・科学・文化などの分野で国際的に評価される成果を持つ個人を対象としています。外国人が申請する場合、海外の企業で最低1年働いていたか、シンガポール内の企業で働く予定であることが必要です。
対象:芸術、文化、スポーツ、研究などの分野での優れた業績を持つ人
最低月給要件:過去1年以内に月額固定給を最低30,000Sドル得ている、もしくはシンガポールで得る月額固定給が最低30,000Sドルであること。
有効期間:最長5年、更新可能
ただし、実績などによっては条件が緩和される場合もあります。
MOM「Key facts on Overseas Networks & Expertise Pass」
研修・インターンシップビザ(TEP:Training Employment Pass)
TEPは海外からインターンシップの大学生や、同一企業内の若手社員を研修の一環で派遣する場合などに申請できるビザです。ただし、一定の要件を満たした大学の生徒であることや、3,000Sドル以上の月額固定給を得ることが申請の要件となります。
対象:海外の大学生、若手社員
日本の大学では東京大学・京都大学・東北大学・東京工業大学の学生が対象
有効期間:最長3カ月、更新不可
MOM「Eligibility for Training Employment Pass」
ワーキングホリデーパス(Work Holiday Pass)
18歳から25歳であれば、ワーキングホリデーパスの取得も選択肢のひとつです。対象国の学生、卒業生は最大6カ月間シンガポールで就労できます。
対象:日本・香港・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・オランダ・スイス・オーストラリア・ニュージーランドの大学の学部生、または卒業生
有効期間:最長6カ月、更新不可
MOM「Eligibility for Work Holiday Programme」
配偶者ビザ(DP:Dependent Pass)
DPは、EPやSパスを保持し、条件を満たした外国人の配偶者と子どもに発行されるビザです。ただし就労ビザではないため、シンガポールで働くためには別途ビザの取得が必要です。
対象:EP・Sパス保持者の配偶者と、21歳未満の未婚の子ども
条件:被扶養者のEP・Sパス保有者の月収が6,000Sドル以上
有効期間:EP・Sパスの有効期間に準ずる
MOM「Key facts on Dependant’s Pass」
短期滞在パス(観光ビザ)
日本人は観光ビザを取得せずに、シンガポールで最大30日間滞在できます。ビジネス目的でのミーティングや視察での滞在もでき、その場合は必要な申請をすれば90日まで延長が認可能です。
対象:観光、ビジネス出張
有効期間:最大30日、延長可能
MOM「Eligible activities for a work pass exemption」
ビザの申請方法
EPやSパスの申請手続きはオンラインで行われ、基本的な流れは以下の通りです。
- MOMへのオンライン申請
申請は企業の担当者が行い、必要書類をオンラインで提出します。審査には10営業日程度かかるのが一般的です。
- In-Principle Approval(IPA)Letterの取得
ビザが承認されるとIPAレターが発行されます。レターの有効期限はEPの場合6カ月、Sパスの場合60日間です。
レターが発行されるまではシンガポールにいなくても構いませんが、この後の手続きはシンガポール内で行います。また、健康診断が必要な場合はIPAレターに記載されているので確認が必要です。
- シンガポールへ入国
シンガポールへ入国します。プリントアウトしたレターと、期限が6カ月以上有効なパスポートを持参します。入国3日前から入国カードのオンライン登録もしておきましょう。
参考:ICA「Singapore Arrival Card (SGAC) and Electronic Pass (e-Pass) Enquiry Portal」
- 健康診断の実施
健康診断が必要な場合、パスポートとレターに添付されている健康診断票を持って健康診断を受けます。健康診断の結果に問題がない、もしくは不要な場合は次のステップに進みましょう。
- ビザの有効化
ビザ有効化の手続きを行い、Notification Letterを発行します。このレターは仮の就労ビザのようなもので、1カ月間のみ有効です。パスポートや健康診断の結果を記した書面、署名済みのIPAレターなどが必要です。
- 申請者の写真と指紋登録
MOMの指定オフィスで写真と指紋を登録します。完全予約制であり、EPの場合はNotification Letter発行から2週間以内、Sパスの場合は1週間以内に予約しなければなりません。
- ビザカードの取得
通常、写真・指紋登録から5営業日程度で就労先の企業へビザカードが郵送されます。
就労ビザ取得に必要な書類
申請するビザの種類によって必要書類は異なりますが、一般的に以下の書類が求められます。
- パスポートのコピー
- 最終学歴証明書(英文)
- 最終学歴証明書に対する第三者機関による証明書
申請するビザやタイミング、状況によって求められる書類は変わるため、申請時には公式の情報をもとに十分確認しましょう。
就労ビザを取得するためのポイント
シンガポールは移民が多く、就労ビザの取得は年々難しくなっています。ビザ取得を成功させるためのポイントを以下にまとめました。
MOMの最新ガイドラインに従う
シンガポール政府は定期的に就労ビザに関するガイドラインを更新しています。スムーズに申請するためには最新のガイドラインを確認し、それに基づいて適切に申請手順を踏むことが重要です。
シンガポールの状況や外国人採用の傾向を把握する
シンガポールでは、特定の産業や職種に対してビザ申請が厳格に行われる傾向があります。例えば、テクノロジーや金融分野の専門職は比較的ビザを取得しやすい一方で、一般的な事務職などでは難易度が高まります。自分の持つスキルが、市場の需要に合っているか判断することが重要です。
日本人の強みを活かせる職種で応募する
シンガポールで日本人が活躍できる職種には、日系企業での日本人対応や、日本の市場に関する専門知識が求められるポジションなどが含まれます。その他、日本人のメリットを活かしやすい職種は以下の記事でもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
>>「シンガポールの平均年収は?高い給与を狙える職種の共通点も解説」
シンガポールで仕事を探すには
シンガポールの就労ビザを取得するためには雇用先を見つける必要があります。仕事を得るには個人の力だけで探すよりも、現地の労働市場をリアルタイムで把握しているエージェントを活用する方法がおすすめです。
シンガポールの人材紹介会社Good Job Creationsは現地在住の日本人スタッフも多く、就職・転職活動からビザ取得まで徹底的にサポートします。シンガポールへの移住・転職に興味がある、ビザの申請に不安があるといった方は、無料相談も実施しているのでぜひ気軽にご相談ください!
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シンガポールへの移住に興味がある方にはこちらの記事もおすすめです。
>>「シンガポールに移住・転職するメリットと注意点!ビザや条件も解説」
参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)シンガポール事務所ビジネス展開課「シンガポールの就労ビザ取得の概要とシンガポール人雇用促進について」